ⓘ マークは、よく変わる情報(料金、期限、窓口のルールなど)を示します。頼りにする前に、必ず窓口で確認してください。
9月21日、月曜日、朝6時40分。Nusleのアパートの浴室で給湯器がカチカチと鳴り、下の通りを路面電車がきしみながら通り過ぎていきます。マリナは浴室の照明を信用できず、プラスチックの検査スティックを窓の光にかざしています。線が2本。チェコの女性なら誰もがそう呼ぶdvě čárkyです。寝ぼけまなこのディマは箱の説明書を3か国語で2回読み、その朝ただひとつ実用的な一言を口にします。「で、どこに電話すればいいの?」
プラハでは、その答えは割り当てられた地区の診療所ではありません。自分で選び、何年も診てもらうregistrující gynekoložka(かかりつけとして登録した婦人科医)です。ただし、クリスマス前に空きがあるかどうかはわかりません。マリナには路面電車で2駅先にMUDr. Holubováという登録医がいます。「必要になる前に登録しておきなさい」と友人に言われたことがあったからです。この助言こそ、このレッスン最初の贈り物です。
このレッスンでは、ordinaceに電話して日にちをもらう方法、初診で聞かれる質問とそのチェコ語での答え方、財布の中のプラスチックカードがこれからの9か月の費用を誰が払うかを決める理由、そして民間保険のčekací doba(待機期間)が、ひと月加入が遅れた家族に何をもたらすかを学びます。最後には、マリナと同じように青みがかったグレーの折りたたみ冊子těhotenská průkazkaを手に診察室を出て、その最初のページを一行ずつ読めるようになります。
今年いちばんよく口にする言葉です。ordinaceでも、人事部でも、お隣さんにも使います。„Jsem těhotná“は飾り気がなく、どこで使っても問題ありません。友人には„čekáme miminko“(赤ちゃんを待っています)という温かい言い方もあります。„V jiném stavu“(直訳「別の状態にある」)は古風で、おばあさんの言葉のように聞こえます。日本語と違ってチェコ語の形容詞には性があるので、女性が言うときは必ずtěhotnáです。
Paní doktorko, myslím, že jsem těhotná. Ráno mi vyšly dvě čárky.
先生、妊娠したと思います。今朝、検査薬に線が2本出ました。
チェコでは自分で選んだ婦人科医ひとりに登録し、その医師が保険者から報酬を受けてあなたを担当し、年1回の健診も行います。妊娠期間をまるごと見てくれるのもこの医師です。まだ登録先がないなら、少しでも心当たりがあった時点で電話をかけ始めましょう。プラハで電話口いちばん多い返事は„nové pacientky nebereme“(新しい患者さんは受け付けていません)です。
Moje registrující gynekoložka ordinuje v Nuslích, dvě zastávky od nás.
私のかかりつけの婦人科医はNusleで開業していて、うちから2駅です。
チェコの医師は„na objednání“(予約制)で診療します。診療所が電話を受け付ける時間帯、たいていは早朝に電話して日にちをもらいます。予約なしだと„akutní“(急患)の人たちに混じって待つことになります。カギになる質問は„Kdy se můžu objednat?“(いつ予約できますか)です。
Dobrý den, chtěla bych se objednat, mám pozitivní těhotenský test.
おはようございます、予約をお願いしたいのですが。妊娠検査で陽性が出ました。
診察室そのものも、小さな診療所全体も指します。医師ひとりと看護師ひとりが、集合住宅の1階を改装した部屋で診ていることもよくあります。ドアには„ordinační hodiny“(診療時間)が掲げられ、その下に予約患者専用の午前の曜日が書かれています。チェコでは地上階を数えずに階数を数えるので、„druhé patro“は日本式でいう3階です。
Ordinace je ve druhém patře, zvoňte na sestru.
診療所は3階です。ベルを鳴らして看護師さんを呼んでください。
初診で最初に聞かれる質問で、医師が知りたいのはその初日です。座る前にスマートフォンに日付を用意しておきましょう。冊子ではPMと略され、予定日はここから計算されます。
Poslední menstruaci jsem měla dvanáctého srpna.
最後の生理は8月12日に始まりました。
最終月経から計算し、最初の超音波検査で修正されます。冊子にはTPと書かれます。チェコ人は世間話でもしょっちゅう使い、妊娠を打ち明けると同僚もお隣さんも決まって„Kdy máš termín?“(予定日はいつ?)と聞いてきます。
Termín porodu vám vychází na devatenáctého května.
予定日は5月19日になりますね。
健康保険者が発行するプラスチックのカードで、毎回の受診、病院、薬局で必ず提示します。色とロゴを見れば、看護師はあなたが公的制度(VZP、OZP、ČPZPなど)の加入者か民間保険かを一目で判断します。財布には有効なカードだけを入れておきましょう。
Kartičku pojištěnce mám doma, můžu vám nadiktovat číslo?
保険証を家に忘れてしまいました。番号を読み上げてもいいですか。
チェコの雇用主のもとで働いていれば、在留許可の種類にかかわらず初日から自動的に加入しています。妊娠と出産で、任意のいくつかの検査を除けば追加の負担はありません。赤ちゃん自身の保険は別の話で、両親のどちらもtrvalý pobyt(永住)を持っていない場合は、子どもの分の保険料を毎月親が払います(レッスン07) ⓘ。落とし穴は家族です。家族としての在留許可で来てここで働いていない配偶者は、この制度に入っていません。
Jsem zaměstnaná, takže mám veřejné zdravotní pojištění u VZP.
私は会社員なので、VZPの公的健康保険に入っています。
長期在留の非EU外国人で、チェコで雇用されていない人(自営業者、学生、家族)が必要とする保険です。2021年8月からPojišťovna VZP(PVZP)が販売しており、2026年も現実的な選択肢はこれです ⓘ。妊娠と出産が補償されるのは待機期間を過ぎてからなので、2本の線が出るずっと前に加入していなければなりません。
Manželka nepracuje, takže potřebuje komplexní zdravotní pojištění cizinců.
妻はここで働いていないので、外国人向けの包括的健康保険が必要です。
民間保険に加入してから、一部の医療が補償されない数か月間のことです。妊娠については一般に3か月とされてきて、その期間内に始まった妊娠はまったく補償されません。出産そのものにも別の条件がつくことがあります ⓘ。PVZPは別商品として„MÁMA A MIMINKO“も販売しており、保険会社が承認すれば待機期間なしで妊娠と出産を補償します ⓘ。公的保険には待機期間はありません。
Pojistku má od srpna, takže čekací doba ještě neuplynula.
彼女は8月から加入しているので、まだ待機期間が終わっていません。
婦人科医が初診か2回目の受診で発行し、毎回の健診で書き込んでいく折りたたみ式の冊子です。日付、血液型、検査結果、体重、血圧が記録されます。porodnice(産科病院)にも含め、どこへでも持っていきます。これがないと病院はゼロから始めることになります。ビニールのカバーに入れておきましょう。9か月間ずっとバッグの中で過ごす冊子です。
Průkazku noste s sebou na každou kontrolu a pak i do porodnice.
冊子は毎回の健診に、そのあと産科病院にも持ってきてください。
初診のとき、またはその直後に、看護師が基本検査のための採血をします。血液型とRh因子、血球数、感染症です。特に指示がなければ朝、何も食べずに来てください。„Jdu na odběry“は「採血に行ってきます」という意味です。
Na odběr krve přijďte zítra v sedm ráno nalačno.
明日の朝7時に、朝食をとらずに採血に来てください。
10月2日金曜日、7時40分。Praha 4の集合住宅にあるMUDr. Holubováのordinace。待合室には椅子が6脚、ゴムの木、子宮頸がん検診のポスター。検査から11日目のマリナは、パスポート、在留カード、最終月経の日付を書いたメモを入れたファイルを持っています。ディマは仕事中で、何もかも写真に撮って送ってほしいと頼んでいます。
ホルボヴァー先生
Dobrý den, paní Kuznetsová, posaďte se. Tak co vás ke mně přivádí?
おはようございます、クズネツォヴァーさん、どうぞおかけください。さて、今日はどうなさいましたか。
長いáに注目してください。チェコのスタッフは話すとき、名前がチェコ語であるかのように„Kuznetsová“と言います。パスポートにはKuznetsovaとあってもです。これは文法であって間違いではなく、訂正を求める人はいません。
マリナ
Dobrý den, paní doktorko. Minulý týden v pondělí mi vyšly dvě čárky. Myslím, že jsem těhotná.
おはようございます、先生。先週の月曜日に検査薬で線が2本出ました。妊娠していると思います。
„Paní doktorko“は呼格で、女性の医師に呼びかける唯一の正しい形です。„doktorko“だけではくだけすぎで、名字は要りません。日本語の「先生」と同じく、肩書きで呼びかけるのが自然です。„Vyšly mi dvě čárky“はチェコの女性がまさにそのまま使う言い方です。
ホルボヴァー先生
Gratuluju. Kdy začala poslední menstruace?
おめでとうございます。最後の生理はいつ始まりましたか。
お祝いの儀式はこれで終わりです。続く40秒は日付の話ばかり。チェコの医師は妊娠6週ごろより前に診察したがることはあまりありません。それ以前は超音波でほとんど何も見えないからです。
マリナ
Dvanáctého srpna. Mám to tady napsané.
8月12日です。ここに書いてきました。
日付は序数で、生格になります。„dvanáctého srpna“。書くときは„12. 8.“と数字ですが、口に出すときは月名(srpen = 8月)を生格で言うのが丁寧な形です。受診前に12か月分を覚えておきましょう。
ホルボヴァー先生
Výborně. Kartičku pojištěnce máte?
結構です。保険証はお持ちですか。
マリナ
Ano, tady je.
はい、これです。
差し出すものをよく見てください。多くの外国人が、学生時代やビザ用の古い保険証を今のカードと一緒に持ち歩いています。朝7時40分には取り違えやすいものです。
ホルボヴァー先生
Tohle je ale komerční pojištění od PVZP a platnost skončila loni. Jste teď pojištěná jinde?
でもこれはPVZPの民間保険で、去年で期限が切れていますよ。今はほかで保険に入っていますか。
医師は細かいことを言っているわけではありません。この受診と妊娠期間全体の費用は保険者に請求しますが、民間の保険会社は公的保険者と支払いの仕組みが違います。期限切れのカードでは、誰にも請求できません。
マリナ
Pardon, to je stará kartička ze studia. Teď jsem zaměstnaná a mám VZP, ale novou kartičku jsem nechala doma.
すみません、それは大学時代の古いカードです。今は会社員でVZPに入っているのですが、新しいカードを家に忘れてしまいました。
ここでの魔法のひと言は„Jsem zaměstnaná“(会社員です)です。これで公的制度の加入者だと医師に伝わります。VZP(公的保険者)とPVZP(その民間子会社)の違いにも注意してください。一文字違いで、まったく別の世界です。
ホルボヴァー先生
Nevadí, nadiktujte mi číslo pojištěnce a ověřím si vás online. Ale buďte ráda, že nejste na komerčním. Tam je na těhotenství čekací doba.
大丈夫ですよ、保険番号を読み上げてください、オンラインで確認しますから。でも、民間保険でなくてよかったですね。あちらには妊娠に待機期間があるんです。
診療所は患者の公的保険の加入状況をオンラインで確認できるので、カードを忘れても不便なだけで大惨事ではありません。それでも次回は持ってきましょう ⓘ。待機期間のひと言は、妻が雇用されていない家族にとっての厳しい現実です。子どもを考える何か月も前に包括的保険に加入しておきましょう。
マリナ
To jsem nevěděla. Kamarádka si pojistku koupila až v červenci a teď je v pátém týdnu.
知りませんでした。友人は7月になってようやく保険に入ったのですが、今、妊娠5週なんです。
„V pátém týdnu“は序数詞の前置格です。„ve dvacátém týdnu“、„v sedmém týdnu“も同じ形です。ご友人のケースはまさに待機期間が想定している状況です。今日のうちにPVZPに電話し、何が補償されるのかを書面で確認するべきです。
ホルボヴァー先生
Ať si to s pojišťovnou vyřeší hned. A teď se podíváme. Tak, sedm týdnů a dva dny, srdíčko bije. Termín porodu devatenáctého května.
すぐに保険者と話をつけたほうがいいですね。では、診てみましょう。はい、7週と2日、心臓が動いています。予定日は5月19日です。
チェコの医師は週数を„7+2“と書き、„sedm plus dva“と読みます。„Srdíčko bije“(心臓が動いています)は、どの親も忘れない一文です。ここで決まった予定日はTPとしてそのまま冊子に書き込まれます。
マリナ
Devatenáctého května... Děkuju. A co mám dělat teď?
5月19日…ありがとうございます。これから何をすればいいですか。
ホルボヴァー先生
Vystavím vám těhotenskou průkazku, tu noste všude s sebou. Sestra vám vezme krev a objednáme vás na dvanáctý týden na screening.
妊娠記録の冊子を発行しますから、どこへでも持ち歩いてください。看護師が採血をして、12週の検査の予約を入れます。
12週前後の初期スクリーニングは自費になることが多いので、受付で料金を確認しましょう。2026年のプラハでおよそ1,500〜3,000 Kčです ⓘ。詳しくはレッスン02で扱います。
マリナ
Děkuju moc, paní doktorko. Kartičku přinesu příště.
先生、どうもありがとうございました。次回はカードを持ってきます。
帰る前に、冊子の最初のページをディマ用と自分用に写真に撮っておきましょう。万一なくしたとき、次の医師が見たがるのはその写真です。
チェコの妊娠記録冊子
A5判かそれより少し小さい折りたたみ式の冊子です。たいてい医療系の出版社が印刷したもので、診療所が手書きやスタンプで記入するため、細かいレイアウトは婦人科医ごとに異なります ⓘ。最初のページには本人情報、保険、妊娠中に変わらない事項が並び、後ろのページは健診の記録表です。医師は略語で手早く書くので、手書き文字を読み解こうとするより略語を覚えましょう。
| Jméno a příjmení | 名前と名字 | 名字がパスポートと一字一句一致しているか確認しましょう。Kuznetsovaであって、話し言葉のKuznetsováでも、チェコ風のKuzněcovováでもありません。porodniceはここと身分証から書き写すので、両者が一致している必要があります。 |
| Zdravotní pojišťovna | 健康保険者 | たいていは3桁のコードです。111がVZP、201がVoZP、205がČPZP、207がOZP、209がZPŠ、211がZPMV、213がRBP。民間保険にはこうしたコードがなく、名称で書かれます。妊娠中に転職したり保険者を変えたりしたら、医師に伝えて直してもらいましょう。 |
| Rodné číslo / číslo pojištěnce | 個人番号/保険番号 | チェコ人にはrodné čísloという10桁の個人番号があります。これを持たない外国人は、保険者が割り当てた保険証の番号で識別されます。病院の書類で必ず聞かれる番号なので、暗記するかカードの写真を持っておきましょう。 |
| PM | 最終月経 | 最後の生理の初日が日付で書かれます。ほかのすべてがここから計算されます。おおよその日付を伝えたなら、そう言っておきましょう。その場合は超音波の結果が優先されます。 |
| TP | 出産予定日 | 予定日です。2つ書かれていることもあります。PMから計算したものと、最初の超音波のあとに修正したもの(„TP dle UZ“)です ⓘ。有効なのは修正後の日付で、産科病院への申し込みで聞かれるのも、後に医師がmateřskáのためにČSSZに確認する日付もこちらです(レッスン04)。 |
| Krevní skupina, Rh faktor | 血液型、Rh因子 | 最初の血液検査のあとに記入され、例えば„A Rh+“や„0 Rh−“のように書かれます。チェコでは「O型」をアルファベットのOではなく数字の0で書き、0、A、B、ABを使います。IからIVの表記は使いません。Rhマイナスの場合は、医師が抗体検査を追加し、後で注射をすることもあります。いつものことです。 |
| G / P (gravidita / parita) | 妊娠回数/出産回数 | Gは今回を含めた妊娠の回数、Pは出産の回数です。マリナは„G1 P0“。過去の流産や中絶もGに数えるので、医師に聞かれることがあります。率直に答えて大丈夫です。話はordinaceの外には出ません。 |
| Anamnéza ⓘ | 既往歴 | 病気、手術、服薬、アレルギー、家族の病歴を数行で書きます。初診には、薬とその量も含めてチェコ語か英語のリストを持っていきましょう。„beru“に薬の名前を続ければ十分です(„Beru Euthyrox, padesát mikrogramů“)。 |
第一のルールは、チェコの医療は始まりを急がないということです。月曜日に喜び勇んで電話しても、看護師が提示するのは2週間後、6週を過ぎた日にちです。それより前はほとんど何も見えないからです。気を悪くせず、痛みや出血がない限り、早めのエコーのために私立クリニックへ駆け込むのはやめましょう。痛みや出血があるときは、待合室ではなく病院のgynekologická pohotovost(婦人科救急)へ行きます。この落ち着きは無関心ではなく、制度そのものです。
第二のルールは、自分の医師についてです。プラハでは良い婦人科医は友人の紹介で見つけ、何十年も通い続けるもので、„nové pacientky nebereme“という一言は新参者にこの街が課す静かな税金です。まだ2本の線を見る前にこれを読んでいるなら、今すぐ登録しましょう。もう見たあとなら、路面電車で行ける範囲の診療所に片っ端から電話して„Berete ještě nové pacientky?“(まだ新しい患者さんを受け付けていますか)と聞き、妊娠していることを最初に伝えましょう。普段なら断る医師でも、妊婦は受け入れてくれることがあります。
第三のルールは保険についてで、これが厳しい話です。夫婦ともチェコの雇用主のもとで働いている家族なら、考える必要すらありません。妻が帯同家族、学生、自営業者のいずれかである家族は、包括的保険とそのčekací dobaに縛られて暮らすことになり、その計算は容赦がありません。待機期間内に始まった妊娠は補償されず、プラハでの出産を自費で払えば2026年で数万コルナかかります ⓘ。保険の約款は検査の前に読みましょう。後では遅すぎます。
第四のルールは人づきあいです。チェコの女性の多くは、12週ごろの初期スクリーニングまでほとんど誰にも話しません。„do tří měsíců se to neříká“、つまり「3か月までは言わないもの」というのは、迷信というより昔からの知恵です。婦人科医があなたの職場に知らせることはありません。それはレッスン04で、あなたのタイミングで扱います。そしていよいよチェコ人のお隣さんに伝えるときが来たら、大喜びされ、すぐにtermínを聞かれ、1週間以内に手編みの小さな靴下が袋いっぱい届くと思っておいてください。
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